孤毒の果て

成人後自閉症スペクトラム、アル中・双極性障害とも診断される診断された当事者ブログ。孤独な男。据え置きゲームを処分して趣味はカメラへと移行、ミニマル生活へ。

自閉症当事者が自閉症が主人公の映画「ザ・コンサルタント」を見てきた。この映画は定形発達への啓蒙、アンチヒーロー映画として見てはいけない。

映画チラシ ザ・コンサルタント ベン・アフレック

目次

あらすじ

「アルゴ」のベン・アフレックが、凄腕の殺し屋の顔を持つ謎の会計士を演じたサスペンスアクション。田舎町のしがない会計士クリスチャン・ウルフには、世界中の危険人物の裏帳簿を仕切り、年収10億円を稼ぎ出す命中率100%のスナイパーというもう一つの顔があった。そんなウルフにある日、大企業からの財務調査の依頼が舞い込んだ。ウルフは重大な不正を見つけるが、その依頼はなぜか一方的に打ち切られ、その日からウルフは何者かに命を狙われるようになる。アフレックが主人公ウルフを演じるほか、「マイレージ、マイライフ」のアナ・ケンドリック、「セッション」のJ・K・シモンズらが出演。監督は「ウォーリアー」「ジェーン」などを手がけたギャビン・オコナー。

キャスト

クリスチャン・ウルフ / ベン・アフレック

主人公・重度の自閉症

ブラクストン / ジョン・バーンサル

ウルフの弟。ウルフと共に幼少期に戦闘技術を身につける。作中に説明はないがコミュニケーション能力や立ち振舞からおそらく定形発達

ウルフの親父 / ロバート・C・トレバイラー

ウルフの親父、軍人。脳筋的考え方だが・・・投げ出さず最後まで子供達を育て上げる。思考は - 世界は知覚に優しくない、慣れろ。 - 攻撃は最大の防御。 - 子どもたちは自分たちの限界を知る必要がある。 - 攻撃を学ぶことは自分の殻を破ると独自の考え方でウルフを教育していく。

デイナ・カミングス / アナ・ケンドリック

ヒロイン。ロボティクス社の経理、ウルフの会計調査を手伝う。定形発達の天才肌

レイモンド・キング / J・K・シモンズ

商務省の長官。

メリーベス・メディナ / シンシア・アダイ=ロビンソン

過去に逮捕歴があるが、商務省長官レイモンドの部下になる分析官。非常に優秀定形発達の天才肌

ラマー・ブラックバーン / ジョン・リスゴー

ロボティクス社の社長。

リタ・ブラックバーン / ジーン・スマート

ラマーの妹でロボティクス社の経理の責任者。

フランシス

マフィアの会計士をしていた。老人。刑務所で同室だったウルフにの会計などを教える。私と同じ間違いをしないよう居場所を変え続けろ、信頼できる仲間を一人だけ作れとウルフに言う。

ジャスティン

ウルフにパズルのラストピースを渡した子。自閉症もしくはADHDの女の子。施設の院長の娘。落ち着きの無さから自閉症よりADHDか、もしくは併発している、ウルフより重度の模様。

公式予告

www.youtube.com

定形発達と発達障害

この映画を理解するので大事なのは健常者(定形発達)と発達障害者をしっかり演出しているところだ、ここを見逃しては行けない。この作品はところどころに自閉症発達障害と関係する演出や過去の自閉症だったと思われる偉人が出て来る。自閉症についてはかなり詳しく調べられ演出されている、自閉症の子供のおもちゃを並べるなど自閉症のよくある行動だが定形発達の人が見てもただの玩具遊びにしか見えないだろう。面白いのは自閉症の天才と、定形発達の天才が出て来る事だ。

ざっくりとした感想

映画のストーリーで言えば予告でいいシーンを使いすぎている、見る前の予想がほぼあっていた、120分と長め、正直途中中だるみもある、が最終的な映画の評価はかなりいい。俺の中では90点ぐらい。

幼少期

主人公ウルフは重度の自閉症と幼少期にわかる。支援施設の様な所で両親は息子ウルフの自閉症の説明を受けているとき、ウルフはジグソーパズルを作る、空間処理能力のお陰でとてつもない速度で組み上げていく、しかもジグソーパズルは裏返し、柄のない灰色の面で組み立てていくが、ラストピースがテーブルの下に落ちてしまっていた、ウルフはそれを見つけられずパニックになる。彼はやり出したら最後までやらないと気が済まないと言う特性・障害。 これはこだわりと言う言葉で片付けられる程生易しいものではない。精神状態とかそういう物でもない、障害だ。ラストピースはその支援施設にいた落ち着きのない女の子ジャスティンが拾ってくれてパニックは収まり、パズルも完成する。パズルの裏側に描かれていたのはハメドアリだった・・・、彼も発達障害失読症があったと言われている。自閉症の説明も受けるも親父は支援施設には入所させず自分で息子ウルフを鍛える。親父は軍人、弱ければ鍛えればいいと言う考え自閉症特有の感覚鈍麻/感覚過敏も慣れさせればいいと言う。母親は夫に嫌気が指したのか自閉症のウルフを見限ったのかわからないが家族を捨て出ていく。家を出て行く母が家を振り返った瞬間弟ブラクストンは母に向かって中指を突き立てる。親父はウルフともう一人の男兄弟をひたすら鍛え上げる、体が出来上がってない子供のウルフをガチムチ大男と本気の殴り合いの訓練をさせる。

モハメド・アリ――その生と時代(上) (岩波現代文庫)

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モハメド・アリ――その生と時代(下) (岩波現代文庫)

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会計士になってからも一人訓練を続ける

大人になったウルフは毎日のように爆音の音楽をかけ部屋にフラッシュライトを焚き、足のスネを棒で強く押し当てたり、殴ったりと訓練をしている。音と光は感覚鈍麻/感覚過敏/痛みへの慣れだろう。そして大人になっても薬を飲み続けている。ピルケースには【ZOLOFT100 ・・・TABLET】と記載がある日本では、ジェイゾロフトのことだ。抗うつ剤SSRI)この映画上、ウルフのパニック衝動を抑えるために飲んでいる物と考えるのが妥当だ。

大人になってからはほぼ映画予告の内容通り、天才的な会計士、天才的な戦闘能力。射撃については16キロ離れた的を3連続一撃必中で狙撃するほど、あとで分かるがウルフ一度軍に入りっているのでここでも戦闘訓練を受けている、この狙撃シーンは自閉症の空間処理能力の高さの演出だろう。

ジェイゾロフトや薬のことを知りたいなら、じほうのドラッグノートをおすすめする、処方箋薬局の薬剤師がよくポケットに入れている。

Drugs-NOTE2017 ドラッグノート

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「リビング・ロボティクス」社〜ラスト

「リビング・ロボティクス」社で財務を担当している。定形発達の天才肌デイナ(ヒロイン)が不正気が付きウルフに依頼が行く、デイナが1年掛かって足がかりを見つけた不正を、ウルフは一晩で解決してしまうと、「リビング・ロボティクス」のお偉いが消される。その後ウルフも狙われるようになるがウルフは強いので問題なしすべて倒していく、そして時折電話越しに女性からの支援・支持を受ける。

もう一人の定形発達天才とメリーベス・メディナと細かい演出

同じ時間軸でレイモンド・キング捜査官に命じられメリーベス・メディナがウルフを探す、彼女は早い段階でルイスキャロルやガウスを検索しているが、その時点では点でしかなかった。後に仲間から自閉症の事を知らされる。「自閉症は外見上はわからないが・・・」「自閉症は行動に現れる、社会的関係・コミュニケーションが困難で視線を合わせない。」と聞かされた、彼女は再度ルイスキャロルを検索する「不思議の国のアリス」で有名だが、天才的数学者でもあった。そしてネットで出てきたルイスキャロルの画像はどれ一つとして目線が合っていない。そしてルイス・キャロルの説明文の一部に自閉症の文字。そして次はカール・フリードリヒ・ガウスは数学の王子と呼ばれ自閉症だったのではないかと言われている。

ウルフの目的と声の主

昼は会計士で夜は殺し屋、何故金がいるのか理由は単純だった発達障害支援施設を援助する為の金だった。そして時折掛かってくる電子声の様な女性はジャスティン、ジャスティンは障害で30年も喋れない、PCの合成音声を使えばコミュニケーションが取れる。フランシスが刑務所で信頼できる仲間を作れと言った、信頼できる仲間はジャスティンの事だった。彼女との合成音声を使っても互いに発達障害を抱えている二人はTEL時に画面に顔文字でニコニコマークや怒った顔など感情を見てわかるようにしていた、ここも細かい彼らは、相手の喋り方等で相手の感情を読み取るのが下手だからだ、このツールを使っていたんだろう。ちなみににこの顔文字は最初の発達障害支援施設の壁に貼り付けてあった。 日本でも「自閉症の僕が跳びはねる理由」で有名になった東田直樹氏と同じような症状だ、自分の口では会話ができないがPC等のツールがあればコミュニケーションが取れる。

自閉症の僕が跳びはねる理由 (角川文庫)

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クリスチャン・ウルフ自閉症の演出と演技

素晴らしいの一言だ、言葉の綾がわからない、人と目を合わさない、人と食事を取らない、人とかかわらない。同じ行動同じ食事方法を取る。etc…。このあたりの説明は映画上出てこないが自閉症の特徴だ事前に自閉症について知らないと彼の演技の凄さがわからない。

この映画は定形発達への啓蒙と自閉症への魂の開放

正直、途中の戦闘シーンはどうでもいい。この映画が言いたい事は、自閉症が今や68人に1人いる。そしてそもそも定形発達が自閉症者を判断できているのか、彼らのほうが優れているのではないか、発達障害を判断するテスト方法そのものが間違っているのではないかと、言うことだ。そしてラストシーンまたあの発達障害支援施設。また別の家族が相談に来ている、自閉症は外見上わからないとされている一方で、中性的な顔、整った顔をしていると言われている。そんな子どもが出てくる。会話ができない。そしてその子がジャスティンと出会う。ジャスティンは未だに落ち着きはない当然だ発達障害は治らないのだが、ジャスティンはPCの前に座り合成音声でコミュニケーションを取る。そうその声はウルフと話していたあの声、合成音声。そして園長はその親に言う、

「あなた達の子供は劣っているのではない、異なっているだけです。(略)結婚 子供 自己充足 それらは現実しないかもしれない、しかし確実なのは 多分彼は思う以上に能力はあります、そして多分、その表現方法を知らないだけなのです。あるいは、私達がそれを理解する方法を知らないのです。」

今現在、自分の子供が自閉症だとわかった親がこの映画を見たらかなり気が楽になるだろう。ただやはり、結婚 子供 は無理だろう・・・。そもそも本人がしたいと思っていない可能性が多いにある。

終始この映画は自閉症がキーになっていた。

自閉症スペクトラムがよくわかる本 (健康ライブラリーイラスト版)

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